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07/06/07

王滝SDA100km

今シーズン前半山場となる王滝がついにやってきた。
王滝SDA(Self Discovery Adventure) 100km。
長野県王滝村で開催される。
今MTB界で最も熱いイベントといえるだろう。人気の秘密はダブルトラックの林道をワンループ100kmという日本離れしたスケールだろう。

午前1時。寝付けないで・・・・・・・・・・・・・・

王滝SDA100kmレースレポート
2007年 6月 5日
チームブリヂストン・アンカー
鈴木雷太
http://www.raizou.com/
mail@raizou.com

開催日 2007/6/3
開催場所 長野県王滝村
大会名 王滝SDA100km
天候 晴れ  路面状況 ドライ
使用バイク ANCHOR HMX9
アイウェアー OAKLEY G30イリジウム
結果 2位

今シーズン前半山場となる王滝がついにやってきた。
王滝SDA(Self Discovery Adventure) 100km。
長野県王滝村で開催される。
今MTB界で最も熱いイベントといえるだろう。人気の秘密はダブルトラックの林道をワンループ100kmという日本離れしたスケールだろう。

午前1時。寝付けないでいる。
体が熱っぽい。前日の前座イベント御岳山ヒルクライムでの走りで身体が火照っているのだろう、と思い込みながら床につくが、寝返りや布団の中にこもる熱が気になってしまう。
一晩くらい寝なくても走れるってものだ。
今まで過度なプレッシャーで寝られない一夜の末、勝利を掴み取ってきた経験があっても、未知の100kmは不気味な存在感となってのしかかる。
王滝ヴァージンブルーってことか?
半分諦めて寝られない理由であろう、そしてそれは最後まで行いたくなかった行為に出た。
検温である。
「ピピッ」
と検温が終了したことを告げると同時に、やっぱりというか、落胆してしまった。
「37.2℃」
微熱だ。前日メイン会場となるスポーツ公園に到着すると同時にくしゃみ連発。
花粉のいたずらだった。
が、時に花粉症に隠れて風邪もこの時期やってくる。例年花粉の影響と高をくくっていると、後に発熱、くしゃみ、ダルさなどが次々に訪れやられることがある。
今回もそれだった・・・・・。
まずは諦めの境地じゃないけど、開き直るしかない。
深呼吸を繰り返しながら思考を閉ざし「無」になろうと心がける。
「無」のつもりが、いつしか繰り返される疑問だけがこだましながらやっと眠りに落ちた。

「それでもまだ走るのか?」

3時45分目覚ましで起床。
そして検温。37.4℃。
コンビニでおにぎりなどを買うがもちろん食欲は無い。
朝も早いし風邪の影響もあるだろう。
おにぎりを少し詰め込み、そしてバファリンを飲み、ブルーハーツをOakley Thumpで流しながら会場入り。

070603-1.jpg

ここまできたら熱のことは忘れて楽しむしかない。
バイクの最終セッティングを行う。
大きいネジから順に増し締めする。そしてタイヤエア圧チェック。
ライフラインとなる捕食も最終点検。朝食を思ったより食べられなかったので「ワカメおにぎり」をGregory Stimulusに追加した。
そうしているうちにもうスタート時間だ。
物凄い人の列。みんな1時間も前からスタートポジション争いのために準備していた。これだけの参加者が一斉にスタートするわけだから、スタートポジションも大切だろう。
招待選手ということで申し訳ないが最前列に並ばしてもらう。

6時ジャスト。ピンッと張り詰めた冷たい空気の中、甲高いホーンを合図にスタートが切られた。
ローリングスタートでゆっくりとアップがてら進む。
やはり身体は重い。登り返しで力が入らない。
だけどもそんなことはもうどうでもいい。今は100km先のゴールの事しか頭には無い。
やっとダート区間に入り正式スタートが切られた。すぐに王滝KING松本駿が出てきて、一緒に話ながら進む。たわいも無い会話があるからこそ楽にスタートが切れた感じだった。
1個目の登りを終えるときには3番手を走行しており、前の二人から後れを取っていたが下りですぐに追いつく。2個目の登りもまた駿から遅れてしまっていた。差を取り戻すべく順調に下る。そして普通の左直角カーブ。右側ほとんどが水溜りだった。曲がりながら岩をきっかけにもっとインへレーンチェンジ。フロントタイヤが接地すると同時に一瞬にして滑ってしまい、気がついたときには地面におはようのキスをかましていた。痛恨のクラッシュだ。起き上がる時若干クラクラッとふらついて軽い脳震盪気味になっていたようだ。起き上がりバイクチェックしたが問題はなさそうで、すぐに走り出す。
タラタラッと冷たいものが顔に一筋のラインを刻んだ。
拭いてみるとやはり流血だった。寝転がっている間に抜かれたライダーまで追いつき怪我の状況を走りながら見てもらう。
「眉毛の上が切れていますよ。」

「それでもまだ走りたいのか?」

自問が始まる。
ズキズキと痛みはあるけど、脚は廻る。
答えは見つからないまままた下りへ。さっきよりもハイペースと思えるスピードで走り先頭の駿に追いついた。そこから第1チェックポイントまではランデブーで進む。

途中絶対にでっかい岩魚がいると予想できるポイントに後ろ髪をひかれつつ、進む。
思考回路はレースモードから自問自答というか瞑想的だ。
岩魚の話、小学時代の同級生のこと、自分が違う職業に進んでいた場合の予想や、将来のことなどなど。
このレポートを書くにあたって第1チェックポイントから第3チェックポイントまでが上手く思い起こせない。途切れる景色は存在するけど、何がどうだったのか?

第3チェックポイントで「駿と5分差」と聞く。
まだそれほどな差ではない。
登りながらとっておいたコーラに手を伸ばす。
美味い、最高だ。
あとどれくらいの距離があるのかもよくわからない。
もう終わりだろうと期待してコーナーを曲がると、谷を挟んで向こう側に続く道。そしてそれらは必ず登っている。

「あと少しだ」
と伝えるレーサーとしての本能と、
「まだ走るのか?」
と囁く本音。

今走っているスピードはそれらが交じり合った結果だ。

ハイドレーションバックは底をついた。

コーラは一気飲みしてしまいすでに空だ。

残されたジェルを溶かしたドリンクも半分もない。
少し飲む。

焼け石に水だ。余計に飲みたくなる。
もう最後の登りは終わっても良いはずだが、その先の下りに期待すればそのつど裏切られ本音が大きくこだまする。
「まだまだ走るのか?」

「天然エイドステーション」。
清流を汲み、渇いた身体に冷たい水を全身に浴び胃袋に水をぶち込みたい。
清流を横切るたびにそんな事を想像する。

が、止まれば最後。本音が一気に優勢となるのが分かっているだけに止まりたくない。

そう、「それでもまだまだ俺は走りたい!!」
熱が出ても、ちょっとくらい寝なくても、顔を切っても、まだまだ俺は走れる。

そんな答えが出てきたときにラスト10kmの看板で下りが始まった。

気持ちよく駆け抜けてあっという間にゴールへ飛び込んだ。
5時間6分。

070603-2.jpgゴールした瞬間、大きな虚脱感に襲われたと同時になんとも言えない満足感がこみ上げてきた。

王滝100kmの魅力はワンループの林道じゃなく、自問自答で始まり終わる自分との対話に達成感、満足感などじゃないかと今になって思う。

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